私が初めてタイで働き始めたのは今からおよそ十数年前です。ちょうど反タクシン派市民団体「黄シャツのデモ隊」(正式名称:民主市民連合, People’s Alliance for Democracy, พันธมิตรประชาชนเพื่อประชาธิปไตย)が盛んになり始めたときです。この頃は全くと言ってタイ語が分かりませんでした。
約18年前の学生の時にはタイのバンコクを観光しました。初めての海外旅行でした。そのときに挨拶程度のタイ語を覚えようと思って購入したのが、国際語学社の「まずはこれだけタイ語 – 出版2002/3/1」です。旅行前の一週間は何とか頑張って単語や文章を覚えようとしましたが、「こんにちは(サワッディ、สวัสดี)」「ありがとう(コープクン、ขอบคุณ)」しか覚えることができませんでした。タイ文字に至っては何が書いてあるのやら理解不能で、一体どうすればこのような難解な文字が読めるようになるのか不思議でした。自分には絶対無理だろうなと思ったものです。
初めてのタイ旅行から6年後にバンコクで働くことになるのですが、この時もタイ文字は難しいと思っていました。働き始めてすぐにマンションの一室にある「IPKタイ語学校」でイチャポーン先生にマンツーマンの会話レッスンを受けていました。土曜日がレッスン日だったのですが、前日の金曜日に飲みすぎて二日酔い気味という非常に不真面目な生徒で、数回通った程度でレッスンを辞めてしまいました。(実は約3年後に再度マンツーマンレッスンを受け、自分で決めた期間に渡って真面目に通いました。この時はタイ字新聞の読解などもやりました。)
レッスンを辞めた後は時間のあるときに、TLS出版社の「世界一わかりやすい!一夜漬けタイ語」に記載されているタイ文字を眺め、音声をCDで聞いていました。特に旅行の際はこの本を持参しました。行き先はバンコクからかなり離れた地方だったので、長距離バスの中、時間がたくさんあります。バスの中は大音量のタイ音楽「ルークトゥン」や「タイポップス」が流れていましたが、私は黙々とMP3プレーヤーでタイ語の音声を聞いたものでした。
初めてバンコクで働き始めてから約1年経ったある日、屋台でタイ料理「パッタイ(ผัดไทย)」(ライスヌードルを炒めた料理)を食べました。ふと掲示してあるタイ文字のメニューに目をやると、何故か「パッタイ(ผัดไทย)」という文字が読める気がしたのです。もの凄く感動し、興奮したのを今でも覚えています。半信半疑で隣にいるタイ人にもこれは「パッタイ(ผัดไทย)だよね?」と確認したものです。そして、今まで「パッタイ(ผัดไทย)」という言葉しか知らなかったのですが、パッタイにもいろいろな種類があることに気づいたのです。例えば、「パッタイホーカイ(ผัดไทยห่อไข่)」といって、卵で包まれたパッタイです。
この経験をきっかけに本格的に独学でタイ文字を学習し現在に至っています。私がタイ語を読めるきっかけをくれた「パッタイ!」。もし、まだ食べたことのない方がいれば、ぜひ試してみて下さい。トムヤムクンとは違い、日本人の味覚に合ったタイ料理ですからおススメです。
文章中に下線のある「まずはこれだけタイ語 – 出版2002/3/1」「IPKタイ語学校」「世界一わかりやすい!一夜漬けタイ語」にはリンクが貼ってあるので興味のある方はご覧下さい。